「あんたは…あたしと組まないんだから…」

和美は、ステージまで歩いていく。

「あたしのものに、ならないんだったら…いっそのこと…」

和美は、ステージに上がった。

「壊してしまいたいわ」

和美は拳を、啓介のお腹に軽く当てた。

「姉さん…」

しばらく、拳を当てたまま、

和美は黙り込む。



「でも…弟なのよね…。寝取ることもできない…」

和美は少し笑うと、

視線を外し、啓介から離れた。

ステージの端まで歩く。

無言になる啓介。



和美は、クスクスと笑いだすと、

「冗談よ」

啓介の方を向いた。

「姉さん…」

「本気にした?」

啓介は、胸を撫で下ろした。

「冗談…きついぜ…」

安堵の表情をする弟に、

和美は、1通の手紙を差し出した。

「何?」

手紙は、封が開いてあった。

宛名は、河野和美。

差出人は書いていない。

「読んでみて」

戸惑っている啓介に、

和美は促した。

啓介は、仕方なく…手紙を読む。




「これは…」

眉を潜める啓介に…、

「あんたのファンよ」

和美は肩をすくめ、

「あたしとあんたが、付き合ってると、思ってるみたいね」