朝の教室は、うるさい。

特に…いつもよりうるさいのには、理由があった。

ざわめく生徒たち(特に女生徒)を横目に、教室に入ってきた明日香は、

席で呆れながら、頬杖をついている里美に、近づいた。

「おはよう」

「はあ〜」

里美の溜め息が、朝の挨拶だった。

「みんな…新しいもの好きだよねえ」

里美は、浮かれている生徒たちに肩をすくめた。

チャイムが鳴ると、ざわめきは最高潮になる。

やがて、ドアが開き、担任が入ってくる。

その後から、

一人の男の人が、入ってくる。

歓声が、わき起こった。

クラス中、いや学校中の話題の人物。

教育実習生。

牧村優一。

少し茶色い大きな瞳が、印象的で、

顔を伏せたとき、それは、とても淡く憂う表情になる。

悩んだときや、困ったときの…その瞳の感じが、

いいと、女生徒の間で評判だった。