和美の歌を聴いた次の日。

kkのカウンターで、

明日香は、蹲っていた。

久々に、里美も来ていて、ステージでドラムを叩いていた。


「何かあったの?」

恵子は、おかわりのコーヒーをいれてくれた。

明日香は顔を上げ、ため息でこたえた。

「里美ちゃん…上手くなったわね。才能あるのかも」

「才能…」

その言葉に、明日香は目の前のコーヒーカップを見つめながら、

「あたしにはないわ」

呟くように、言った。

「どうしたの?」

恵子は、心配気にきいた。

「あたし…才能ないから…大して上手くないし…あたしの歌なんて聴いたら、みんながっかりするわ」

またカウンターに、蹲る明日香。

「あら。音楽祭で歌うんじゃないの?」

「だから、自信がないんです!」

恵子は呆れながら、

「昨日は楽しそうだったのに、何があったの?」

明日香のふさぎ込む姿に、話かけた。


「音楽は才能より、気持ちよ。気持ちが、負けてたら絶対…軽やか演奏なんてできないわよ」


「明日香!」

里美が、ドラムセットの中から呼んでいた。

阿部がやってきて、一曲やろうと、明日香を誘いに来た。

里美のリクエスト。

明日香に借りて、まだ返していないアルバムより、

ラウンドミッドナイト。

仕方なく…ステージに上がった明日香は、ミュートはつけず、オープンで吹き出す。

その時、

店の扉が開いた。