眩しいライトの中、

赤いドレスを着こなし、凛とした表情で、

和美は立っていた。

ファッション雑誌の撮影。

この後、朝の音楽番組で、トークと歌をうたい…

夜は、知り合いの料理店のオープニングセレモニーで、

1曲披露しなければならない。

アイドルではないが、

その日本人離れした美貌と、通好みの歌声とテクニックは

音楽を知る者程、魅了した。

スポットライトから出ると、

和美の周りに、多くの人が群がって来る。

そんな人々に、少しの笑みだけで応え、

和美は、用意された席に座った。

和美より、愛想笑いのマネージャーに、

和美は、一枚の紙を渡した。

訝しげに見るマネージャーに、一言。

「これに出るから。もし、予定があったら、すべてキャンセルしといて」

驚くマネージャーに、反対する権利はなかった。