明日香は、トランペットを抱き締めた。

恵子と健司の…kkのアルバムに導かれて、

あたしは、ここに来た。

恵子の歌声に憧れ、

健司の音の優しさを、知りたかった。

(そうなの…。あたしが惹かれたのは、恵子と健司の音!一つじゃない!)


「ママ!あたし欲張りかな!」


明日香は、カウンターに向かって、叫んだ。

恵子は、笑顔を向け、

「欲張りじゃないわ。あなたは、あなたのやりたいようにしなさい。それが、あなたの音楽よ」

明日香は、トランペットを突き出し、

「これ、また使っていいの?」

「もう…とっくに、あなたのものよ」

明日香は、ステージから飛び降りると、恵子のもとへ走っていく。

カウンター越しに、恵子に抱きついた。

「仕方が、ないわね。明日から、もっといっぱい練習しなくちゃね」

恵子は、優しく明日香の頭を撫でた。

「うん」

明日香は、頷いた。