静かに、

トランペットが、エンディングを優しく奏でる。

終わった。

明日香は、深々と頭を下げた。

カウンターに座って聴いていた和美は、立ち上がると、

「これが、あなたの歌。あなたのスタイルね。ペットを吹きながら歌う。ママが指示したの?」

恵子は、軽く首を横に振り、

「あの子が選んだのよ」


和美は、明日香を見た。

ステージ上で、緊張して、トランペットを抱き締め、和美を見る明日香。

和美は、フッと笑った。

(演奏してる時は…まったく緊張していなかったのに…)

和美は、明日香を見据え、

「ペットも歌も、まだまだだけど…認めてあげる」

和美は、明日香から視線を外すと、真っ直ぐ扉に向かう。

「だけど…まだ、愛を知ったばかりの女の子の歌ね。ママ、お邪魔したわ」

扉が、激しく音をたてて、閉まる。


和美は、KKから…嵐のように去っていった。