「どうして、姉さんが引き取るんだ!」

阿部の怒声が、ダブルケイに響き渡った。

「そんなに大声だしたら、びっくりするじゃない」

恵子の腕の中で、眠る赤ん坊。

安藤啓介。

健司と理恵の間に、産まれた子。

啓介が、目を覚ました。

「ほら、起きたじゃない。ごめんなさいね」

恵子は、啓介をあやす。

「見ろよ!こいつの目!あの女にそっくりだ!あの冷たい目に!」

「赤ん坊に、そんなこと言うものじゃないわ」

恵子の笑みに、これ以上ない笑みを返す啓介。

「この子は優しいわ。だって、こんなに笑顔が、素敵なんですもの。まるで天使のようだわ」

「あいつらの子供なんだ!ほっといたらいい!誰かが面倒みるさ」

「誰が?両親はいないのよ」

理恵が、自ら死を選んだ後、

健司も後を追うように亡くなった。

「だからといって、姉さんが…」

「この子に、罪はないのよ」