それは、麻美だった。

ゆうは、麻美を知るはずもなく、すれ違い、

渡り廊下に向かおうとする。

「う、上には!もう望は、いません」

麻美は、階段を上ろうとしたゆうに向かって、叫んだ。

「今日で…あの子は、転校します。サッカー部のエースであるあなたに、迷惑をかけたくないからと…」

麻美は、泣いていた。

「これだけは…これだけは、知っておいて下さい…あの子は、ストーカーなんかじゃなくて……ただ純粋に、あなたのことが、好きだっただけなんです」

涙が止まらない麻美に、階段を降りたゆうが、駆け寄る。

「あたしが…好きだなんて、思わず言ってしまったから…」

ゆうは、泣き崩れる麻美に、ハンカチを差出し、

「彼女はどこに……」

麻美は、ハンカチで涙を拭いながら、

「今さっき…駅に向かって…」

麻美の言葉が終わらないうちに、ゆうは走りだした。

駅に向かって。