スタスタと、あいつはあたしに気付かずに、横を通り過ぎ、

何段か上がってから、

「あっ」

と呟いてから、振り返る。

「おはよー、上月」


階段で、止まったままだったあたしは、振り返り、

少し不満そうに、返事した。

「おはよう…ゆうくん」



だけど、あいつは、あたしの気持ちなんて、わかるはずもない。


挨拶した瞬間から、あいつはあたしを見ていない。

前を向いて、ただ階段を上がっていく。


その後ろ姿を見送りながら、あたしは切なさと、

ほんの少しのうれしさを感じていた。