明日へと旅立つ明日香を、見送った後…

慌ただしい営業も終わり、


バンドのメンバーも帰った後、

カウンターに一人座り、

恵子は、残されたトランペットを見つめていた。

健司の…

そして、

さっきまで、明日香のだったペット。

しばらく見つめていると、隣に誰かが座った。

啓介だった。

手に、バーボンの入った二つのグラスを持って…。


恵子は、グラスを受け取ると、そっと傾けた。

ワイルドターキートリビュート15Y。

シュガーバレルで、15年熟成された甘い香りが漂う。

啓介が、静かに話しだした。

「ママは…なぜあの子に、おやじのペットを、あげたんだい?」

グラスの中で、氷が転がる。

恵子は、ペットをやさしく撫でる。

「だって、この子に、罪はないから…」

恵子は、グラスに口をつける。