駅までの道のりは、遠い。

一本向こうに、土手があり、階段を登ると、川にそってのびる道がある。

テニス部などが、走り込みをする場所だ。

その土手から、風が吹き込んでくる。

風に、髪を靡かせながら、明日香と里美は歩く。

タイミング悪く、踏み切りが閉まった。

2人で、踏み切りの前で待っていると、

里美が、ぼそっと呟いた。

「今日…いくんだ…」

電車が目の前を通った為、明日香には聞こえなかった。

「好きなんだ…」

次の電車が、通り過ぎるまでの、少しの間の中、

里美はまた口を開いた。

「えっ?」

微かに聞こえた…好きという言葉に、

明日香は、里美を見た。

里美は、明日香を見ない。

次の電車が、通り過ぎるまで、里美は前を向いたまま、

決して、明日香を見ようとしなかった。