私は安心しきって上田の腕の中で泣いていたものの大事なことを忘れていた。


「あの~、大丈夫でしょうか……?」


 後ろから遠慮がちに声をかけられた。


 驚いて後ろを振り返れば、申し訳なさそうに立っている男の人がいた。


「あ、あの車の運転手です……」


 男の人が指差す方向には、さっき私がひかれそうになった車が不自然に停まっていた。