出来れば見たくなかった、
あんなお母さんの姿。
だから私はその日からお母さんと呼ぶことをやめた。
お母さんのことを考えるのさえやめた。
小学生三年生になった頃、引っ越した家の近くで真っ白い子猫を拾った。
それがシフォン。
シフォンという名前は私がつけた。
お母さんが作っていたシフォンケーキみたいに柔らかかったから。
その頃ははまだ、優しいお母さんのことを探していたんだと思う。
シフォンは私の心の支えとなった。
家に帰ればシフォンと遊び、宿題なんてまったくしなかった。
学校も転校したため、友達がいるわけはなく、一人だったから唯一の友達だった。
宿題をしないから先生に幾度となく怒られたけれど、私は絶対に宿題をしなかった。
宿題なんてどうでもよかった。

