それから少し経って、お父さんに『どっちについていく?』と訊かれた。

 目の前にはお父さん。

 少し離れたところにお母さんがいた。

 そのあと続けて、『どっちでもいいんだよ。お母さんと暮らしたければお母さんと暮らせばいい』と言った。


 私は残酷だと思ったんだ。

 私が選びようのないことくらいわかってて、それでも私に選ばせる。

 私はふたりと、家族三人で今まで通り暮らしたかった。

 だけどそんなことはもう出来ないことくらい、幼くてもわかっていた。

 たった四才だった私は考えた。

 お金だって、家だって、ごはんだってお父さんの方が絶対に裕福だった。

 だから、私は生きていくためにお父さんを選んだんだ。

 『本当にいい?』そう訊かれたって、泣きたい気持ちを必死に抑えて、『うん』と必死に答えた。