当然、彼女は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに安心した顔を浮かべ握り返してきた。 こんなことしてたら彼カノみたいだなぁ、なんて呑気なことを考えているとお父さんの目が俺の目としっかり合った。 「上田は聞いたかな、夏音の小さい頃のことを」 お父さんの目はしっかりと俺に向いていて、純粋にそう訊いてきた。 一息置き、静かに言った。 「いいえ」 俺は彼女の過去のことを何も知らない。