琴子に言われて、 あの頃の自分を思い出そうとしてみたけれど、 取り出せるものは なにひとつ、出てこなかった。 記憶がないという事ではなくて、 全く何も、残ってなかった。 日々の雑事で時間を潰して、 消耗するだけの毎日を繰り返して、 そうする事で、目を逸らしてきた。 そうしていれば、理由にできた。 全ては、通り過ぎるだけの物で、 僕には何も、残らない。 本当は、それは状況のせいではなくて、 僕自身の問題なのだけれど。