「え？」



突然会話に飛びこんできた聞きなれない声に、思わずわたしは自分の後ろを振り向いた。

そこには、ふわふわな茶髪の若い男の人が、驚いたような表情で立っていて。



「……京一？」



向かい側に座っていた桐生さんも、若干遅れてそう声をあげた。

……『サトル』に『キョウイチ』。

『智』っていうのは、桐生さんの下の名前。

つまりこのふたりは、知り合いだということで。



「うわびっくり。奇遇だなー」

「ああ。……そういや、おまえんちこのへんだったか」

「なんだよその嫌そうな言い方ー。このへんで悪かったな」



間にわたしを挟んだまま、ふたりは親しげに会話をする。

するとその男の人は自分の眼下できょとんとしているわたしに気づいたのか、不意に視線を向けてきた。



「あれ？　どちらさん？」

「あー、俺の教え子」

「ああそっか、家庭教師だもんな」



おおざっぱな桐生さんの説明に納得したようにうなずいて、それから彼はにこっと微笑む。