ひとりきりのリビングに、ピンポーン、とチャイムの音が鳴り響く。

わたしは緊張しながら、玄関のドアを開けた。



「よ」

「こ、こんにちは」



桐生さんの軽い挨拶に言葉を返しつつ、彼を家の中へ招き入れる。

お邪魔します、とひとこと断って、桐生さんは玄関をあがった。


『桐生さんがすき』。


自分の気持ちに気づいたあの日から、こんなに家庭教師の日が待ち遠しくて、なのに来て欲しくないと思ったことはなかった。

──会いたい、けど、会いたくない。

そんな矛盾した思いを抱えて、結局今日を迎えてしまったのだ。


……し、しかも、今日は……。



「──あれ?」



わたしの部屋に向かおうと階段に足をかける直前、桐生さんが何かに気づいたように声をあげた。

それを聞いて、ほとんど反射的に心臓がはねる。