「……つーかアレ、同じタイトルで映画にもなってるから。レンタルショップにでも行けば観れるだろ」

「え、そうなんですか?」



目をまるくするわたしに対し、今度は桐生さんがうなずいてみせる。

──『Dear my Stargazer』なんてタイトルの映画、聞いたことなかった。

けっこう前に、作られたものなのかな?



「映画の方も、観ました?」

「……ああ」

「おもしろかったですか?」

「……ん、おもしろかった」

「そっかぁ。じゃあ、今度探してみよ~」



ひとつ楽しみが増えて、わたしはルンルン気分でシャーペンを振る。

……だから、気がつかなかった。

その映画のことを訊ねられた桐生さんの表情に、ほんの少し、陰りがあったこと。



「もし観れたら、感想教えますね!」



笑顔でそう言ったわたしに、彼は「楽しみにしとく」と返して。

それから、自身が身につけている腕時計へ視線を向けた。



「──よし、じゃあ本人からの了承も得たことだし、後半もビシバシいくか」

「え゙、」

「遠慮しなくて、いいんだよな?」

「……!」



にっこり、なんて擬音がつきそうなほど、桐生さんは綺麗に微笑んでいるけど。

思わず顔をひきつらせるわたしにとって、それは圧力以外の何物でもなくて。


……や、やっぱり厳しいのはほどほどでお願いします……!