「別に、謝ることじゃない。誰にだってこういう日はあるだろ」

「え、」

「だいぶハイスピードで詰めこんでるし……疲れが出たのかもしれないな」



ポンと、頭に大きな手が乗せられる。

わたしはとっさに顔をあげた状態のまま硬直して、ただ桐生さんを呆然と見上げていた。



「おまえ、前よりちゃんと理解できるようになってるから。心配すんな」



なんだ、これ。

あのサドで暴君な桐生さんが、わたしにやさしい言葉をかけてくれている。

なぐさめて、くれてる?



「今日はゆっくり休め。で、次からまたビシバシいくぞ」

「ッわ、」



そう言われると同時に、くしゃくしゃと髪をかき混ぜられた。

ぼさぼさになってしまった頭をおさえながら、もう1度「ごめんなさい」と言おうとして。

だけど代わりに「ありがとうございます」と呟いたら、桐生さんは満足げに笑った。

その笑顔に不覚にも心臓がはねてしまって、これだから顔がいい人は得だなぁ、と頭の隅でぼんやり思う。

はたして彼がその事実をわかっててやっているのか、それはわからないけれど。