「たまたま智は、そのときの観測に参加していなかった。だから、その瞬間を見ることはなかったけど……もし自分が1番大切に思っている人の、そんな光景を見てしまっていたとしたら、きっと正気じゃいられなかったと思う。実際に見た俺らだって、気が狂ってしまいそうだった」
「………」
「連絡をもらって病院に駆けつけた智は、冷たくなっている彼女を見て愕然とした。突然の事故を心が受け入れられずに、だけども頭は理解したみたいで……泣いて、悲しんで悲しんで。彼女が大切にしていた本でさえ、その手で破り捨てようとした」
そこで早瀬さんは、小さく苦笑する。
「まあ、それを止めたのは俺なんだけどね。消してどうするんだ、おまえらの繋がりはそんなもんだったのかって、柄にもなく怒鳴りつけてやったよ」
そんなふうにおどけてみせる早瀬さんを見つめ、桐生さんのそばに彼のような人がいて本当によかったと、心から思えた。
再びカップに口をつけた早瀬さんが、憂いを帯びた表情で窓の外に目を向ける。
「しばらく、智は大学を休んだりもしてたけど……1ヶ月くらいして、何かをふっ切れたような表情でまた元の生活を送りだした。……きっと、彼女のことを一生背負っていこうと決めたんだと思う」
「………」
「連絡をもらって病院に駆けつけた智は、冷たくなっている彼女を見て愕然とした。突然の事故を心が受け入れられずに、だけども頭は理解したみたいで……泣いて、悲しんで悲しんで。彼女が大切にしていた本でさえ、その手で破り捨てようとした」
そこで早瀬さんは、小さく苦笑する。
「まあ、それを止めたのは俺なんだけどね。消してどうするんだ、おまえらの繋がりはそんなもんだったのかって、柄にもなく怒鳴りつけてやったよ」
そんなふうにおどけてみせる早瀬さんを見つめ、桐生さんのそばに彼のような人がいて本当によかったと、心から思えた。
再びカップに口をつけた早瀬さんが、憂いを帯びた表情で窓の外に目を向ける。
「しばらく、智は大学を休んだりもしてたけど……1ヶ月くらいして、何かをふっ切れたような表情でまた元の生活を送りだした。……きっと、彼女のことを一生背負っていこうと決めたんだと思う」



