「……ッ、」



ああ、すきだなあ。

細身なのに広いその背中を見ていると、きゅ、と胸が苦しくなる。


8歳の、年の差とか。

早瀬さんの、言葉の意味とか。

そんなの、考えられないくらいに……頭の中が、彼への想いでいっぱいになる。

彼への想いが、溢れてしまう。



「──桐生さん、」



彼の服のすそを掴んで、わたしは立ち止まった。

一瞬遅れて、桐生さんも足を止める。



「あ? なに?」

「………」



彼の問いかけには、言葉を返さずに。

わたしは桐生さんを引きとめたまま、うつむいて押し黙る。



「望月?」



焦れたようにそう言う彼は、それでもわたしの手を振り払ったりはしない。

ぎゅっと、服のすそを握る手に力を込めた。



「桐生さん、」

「だから、なん──」

「……すきです」