オレは気付かない振りして、コーヒーサーバーの設置された所へ向かった。

コーヒーを淹れると、適当に空いている席に瑠衣と向かい合って座る。


「ねぇ、前から思ってたんだけど、寺原さんと落合さんって仲良過ぎない? 先輩を名前で事務所でも堂々と呼んでるし」

「あぁ。あの二人は昔つき合ってたんだよ」

「はっ?」


瑠衣が目を丸くした。


「もう七年くらい前の話になるんだけどさ」

「いやいや。年数とかどうでもいいから。つまり寺原さんは、元カレと今カレと同じ職場ってことだよね?」

「そいうこと」

「えーっ。あたしなら無理だなぁ。今カレと職場が一緒まではいいとしても、元カレとは…」


どうやら、瑠衣には理解不能な事らしい。

首を傾げている。


「しょうがないよ。異動は人事部が全て決めてるんだし」

「そうだけど…。うーん」


瑠衣は気を取り直すようにコーヒーを飲んだ。