震えてる…。
不安は人を壊していくこと、私は知ってる。
「小川…」
「大丈夫だから、笑わないでよ」
ぎゅうってすると、先生もそれに応えるように腰に手をまわす。
この人も弱いんだ。
私と同じでーーー…
先生の頬に手を添えるとうるんだ瞳と目があった。
「ーーー私が忘れさせてあげる」
そして吸い込まれるように私は先生の唇にキスをした。
思えば私が先生との関係を崩したんだ。
崩したくなったんだ。
「…小川…っ」
ーーガタタッ…
椅子から立ち上がった彼が私の肩をつかむと、その勢いのまま私たちは再び唇を重ねていた。
あまりの勢いに態勢が崩れ、ピアノにもたれかかる。
叫びに似た不協和音が音楽室に響いた。



