「小川か…」


チラッとこちらを向くと乾いた笑い声を出した。

…イヤだ。なんなの。


「そんな顔で笑わないでよ」


そんな嘘の笑顔を私に見せないで。

偽るくらいなら笑わないで。


私には偽りのない先生のままでいてよ。


それだったらまだ冷めたままの方がマシ。



「ははっ…笑えねーんだよ、くそ…」



眉間にシワを寄せてうつむく先生。

表情が暗くてよく見えない。



「なんでだよ…俺たちもうダメなのか…?」



悲痛な声を出す壊れそうな先生を見てぐっと心に迫るものがあった。


助けたい。

私が助けられたように。



「仁美…!」



苦しそうに呼ぶその名前。

先生を傷つけるなんて、許せない。



「先生…」



彼のところまで歩み寄るとそっと抱き締めた。