『お願い。もう一度だけチャンスをちょうだい?』

『ごめん、無理だよ…』

『どうして?大切にしたい女の子って誰?小川さん?』


思わず目を見開いてしまった。


こんなに必死に俺を繋ぎ止めようとするなんて。仁美はてっきり俺のことなんて好きじゃないかと…。


だから別れもすんなり行くかと思ってた。


いや、もしかしたら…
必死に繋ぎ止めようとしている今だって
俺のことなんて好きじゃないかもしれない。


仁美はそうゆう女だ。


『小川さんでしょ?』

『…違うよ。小川は関係ない』

『うそ。だってあなたは嘘つく時、絶対おでこ触ってるもの』


その言葉にまた驚きながら額に当てていた手を静かに落とした。


気づかなかった。

こんなクセがあるなんて自分でも知らなかった。