「こらこら、やりすぎだぞー?」
不意に、そんな声がしたと思うと、ボス
の胸ぐらを掴みあげていた拳を、誰かの
手のひらが包んだ。
ハッとして、見上げると、そこにはニコ
ニコと笑う豊が立っていた。
「豊……離せよ」
「ダーメ。離したらまた、殴るんだろ?
もうこれ以上やったら、コイツら死んじ
ゃうし」
な?と諭され、軽く舌打ちをしながら男
を解放した。
それから暫く歩いて大通りに出ると、豊
がため息をついた。
「お前ねぇ、こんな大雨のなか、なんで
喧嘩なんかしてんだよ」
「喧嘩売られたから」
「……はー。いつもならそんなのスルー
してるだろ。何イライラしてんだ、お前
」
そう。俺はすっげーイライラしてる。
だからその鬱憤を晴らすように、あいつ
らの喧嘩を買ったし、容赦なく殴り付け
た。
いつものストレス解消の方法。


