そんな声が後ろから聞こえてきて、それ
を確認する暇もなく、腰を抱き寄せられ
た。
「澪は、俺のだよ」
「……あぁ?んだテメー……」
こ、この声は───。
向坂くんがみるみる内に不機嫌そうにな
り、ギロッと私の後ろの彼を睨んでいる
。
だけど彼はそんな向坂くんをものともせ
ずに、フッと笑い、
「行こっか、澪」
向坂くんの存在なんてまるで無視したよ
うに、私の手を握って歩き出した。
やがて昇降口まで来ると、門の向こう側
に彼の───燐ちゃんの車が止まってる
のが見えた。
「……っ、り、燐ちゃん……っ」
やっと昇降口で止まった燐ちゃんに、息
が切れながらもそう呼び止めると、燐ち
ゃんがちょっと困ったように笑った。
「澪、ごめんね、急に走り出して」
そんな燐ちゃんに、大丈夫だと首を振る
。


