結果的にそれは"信じてた"だけだった。
思い込んでいただけだったんだ。



その仲の良さを演じているだけで、実際
は仮面だったんだ。



「澪……お前はいつも母さんのことを、
"燐ちゃんママ"って呼ぶけどな……俺の
母親じゃねーんだよ」



そう言うと、戸惑ったように澪の瞳が揺
れ出した。



「だって血が、繋がってないんだから」



あれは二番目の母親。



俺が愛していた二人は、もう居ない。残
ったのは取り返しのつかない罪をしでか
した父親の方だけだった。



俺が大好きだった母さんはもう居ない。



最後に見たのは、俺をただ強く抱き締め
て、ごめんね、と泣きながら呟く姿だっ
た。



二人は離婚した。



「親父はな……浮気したんだよ」



最低な男だと思った。



母さんという存在がありながら。俺とい
う子供が居ながら。