ヤンヤンデレデレ


言葉の意味を把握出来ずに、立ち止まってしまう。

「騙されているからって、何か問題がある?」

どうせいつかは離れていく、『その場しのぎ』のようなものにとって、俺の嘘は取るに足ることなのか。俺にとって、君たちがその他大勢なら、また逆も然りだというのに。

「騙すなら徹底的に騙して下さいってな話ですよ。まっ、俺はもうセンパイの『笑顔』見ちまったから手遅れですけど」

イタズラ気に笑われた。
綺麗に笑ってみせるなと、ほとほと感心してしまう。

「俺といて、何がそんなに楽しいの?」

前にも同じ質問をしたような気がするが、思い出せない。津久井くんとは『よく喋る仲』としてやっているが、その実、一連の話は彼女と一夜を共にすると形を無くす。思い出すための断片が液状化し、上手く掴み取れない。

「休日にやるテレビ」

「え」

「再放送ばっかでつまんないんすよね」

「ええと」

エレベーターの扉が閉まる直前、津久井くんが俺を指差す。

「第一話に見てしまって、どつぼにハマった、終わりまで、欠かさず生で見たくなる深夜番組!」