何がと振り向けば、呆れ顔の津久井くん。
津久井くんの息とてあまり好まないが、返事をしたくなる言葉を彼はよく吐くので自然と呼吸をしてしまう。
「どこが?」
こんなにも他人を嫌っているのに。虫唾が走るほどに、嫌いだ。
「今のやり取り、ちょー紳士っすよ。女が乗り降りするのに、わざわざエレベーターの扉に手をかけ。何階?とかナチュラルに聞いてみたり、高い身長の男特権のたくましい背中をあえてさらして、センパイのが偉いのに『お疲れ様』とか微笑みながら言うとかー、モテないのがおかしいぐらいっすよ」
頭を掻く津久井くんの視点からは、そういったことになっていたらしい。誤解だと言おうが、あの従業員は誤解したままで記憶に残す。


