ヤンヤンデレデレ

 
誉がどんな料理を作っているか想像していれば、エレベーターが止まる。地下駐車場ではなく、三階で。

「あ、九条主任」

「お疲れ様」

同じ仕事終わりの女性従業員。頭を低くしながら、俺の脇を通り過ぎた。

「そういえば、主任。企画部の課長が、主任のことをお探しでしたよ」

「ああ、何か話があるとか、今朝から呼び出しをくらっていたんだ」

前の件についてだろう。あれと同じ息を吸いたくないから無視していた。

無論のことながら、この従業員とも。エレベーターは便利であるが、密室であるのが難点だ。呼吸を減らしてはいるが、誉以外の何かが吐いたものを吸うのは想像するだけで、反吐が出そうになる。

「駐車場?」

「え?あ、いえ!友人と一階で待ち合わせしているので!」

「そう」

ならばと、一階のボタンを押し、外界の空気を大きく吸った後に閉のボタン。後ろに控えている従業員のお礼に適当な返事をしておく。

息継ぎせずとも、一階はすぐだ。
水から浮き上がったかのように、扉に手をかけ、息をする。ただし、あくまでも、自然にだ。大口開けて息をしたいのを鼻で我慢する。

「主任、失礼します」

駆け足で俺の脇を通る従業員。気をつけての挨拶をしながら、人差し指は閉ボタンを連打していた。

「センパイー、モテる要素だらけじゃないすかー」