この百貨店で唯一、顔と名前が一致する津久井くん。鏡越しに髪の毛を直す津久井くんを見た。
「赤は流石にまずいよ」
「赤茶すよ。こわーい上司に怒られても、センパイが助けてくれると信じてますから」
「俺はそこまで偉くないよ」
「またまたー。出世頭のくせに」
「俺が君の上司になった暁には、髪を刈ってもらおうかな」
「じゃあ、センパイは何色が好きなんすか?」
「誉の髪色以外は別段何とも思わない。もっとも、彼女と同じ髪色した奴を見ると、殺意が出てくるけど」
「マジで刈らなきゃなんないすか」
そんな津久井くんは、きっと更に派手な色に染めてくるのだろう。不真面目さは叱るべきだろうが、どうでもいい。
これから誉に会えるのだから、そちらばかりに思考が傾く。


