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「虫歯だ……」
素人目から見ても分かる黒い点を右奥歯に発見した瑞希は、複雑な顔をするしかなかった。
「誉、歯磨きしてた?」
「瑞希さんが口の中綺麗にしてくれるから大丈夫かなって」
一日に三回以上はあるディープキスで歯磨きを疎かにした誉であった。
「綺麗にするつもりでやっているわけじゃないよ……」
とりあえず腫れないように右頬に冷えピタを貼り、今後の対策を練る。
虫歯ならば歯医者に連れていくべきだが。
「歯医者は嫌です!」
「分かっているよ。俺も嫌だから」
よくある『痛いのが嫌だ』ではなく二人の場合は。
「「他人に口の中を弄くり回されるだなんて、考えられない」」
「です」
「からね」
見事に噛み合う二人の理由。こんな理由で風邪を引いても病院には行かない二人であり、今まで自宅療養で事足りる病気ばかりだったため、今回のケースは初めてだった。


