『拉致して殺すから』
言わずに終わったのは、既に切られたからであった。
硬直。携帯電話を耳に当てたまま、数分間、あずみは固まっていた。
何が、あった?
そんな自問で我に返り、携帯電話の履歴を確かめる。
先頭にある知らない番号。日付と時間で、今さっき出た通話相手の番号で間違いはない。
拉致して殺すから、そんな女の声。
「ひ……っ」
怖がったのは当然だ。携帯電話を枕に投げ捨て、震えてみせる。
いたずら電話でまとめるにも、耳に残るあの声があまりにも冷たく聞こえ――“やられる”と思ったんだ。
無意味にもカーテンの隙間から外を眺める。誰もおらず異常なし、しかして嫌な汗が出てきた。


