引くつもりはない姿勢のあずみは、今にも九条に抱きつきそうであった。
それを想像し、鳥肌を立たせる。車に乗り込み事なき得ても、明日になれば朝から顔を合わせまた繰り返されるのは明白。
「……。受け取るから、もう二度とこんな真似しないでくれ」
こういった手合いが今までなかったわけではなく、これが最善の対処法と九条は熟知していた。
その場しのぎには違いないが、周りが見えず自分勝手に来るタイプは断れば断るほどに熱がこもる。
逆境が、困難が、障害が、そういった類いのものがあればあるほど燃え上がる系統だ。
思わせ振りな態度も地雷だが、譲歩も許さず頑なに断り続けて傷心した相手が何をするかも分からない。
同じ職場の上司と部下。職場で自身のマイナスにしかならない噂も流されたくはない。


