「あの、ね……」
「せめてこれを受け取ってくださいっ」
頭を下げながら、自身の電話番号を書いた紙を差し出すあずみに、九条の顔は見えていない。
「受け取れない。じゃあ、また明日職場で」
「ま、待ってください!九条主任、これだけでもっ」
車に乗り込む九条の腕を咄嗟に掴んだあずみ。条件反射のように、九条が大きく腕を払ったのは言うまでもなかった。
払われた勢いで倒れるあずみ。
「俺の体に、彼女のなのに」
ぼそりと呟かれたことは、尻餅をついたあずみにまで届かない。ここまで嫌われてしまったかと泣きたくなるも、引いては駄目だと立ち上がる。
「初めてなんですっ。人を好きになったの!九条主任みたいな男性、今までいなかったから……っ。せめてこれだけでも!」


