涙を流すあずみに、九条は困り顔をする。
「一度言えば、分かるよね」
そう“微笑んで返された”のが、心臓に穴を空ける。
「だ、誰か、付き合っている人が」
「……。いないよ。いないけど、いたとしても君とは付き合わない」
背後でする甲高い笑い声も耳障りだが、九条から“想像もしていなかった言葉”を聞かされて、耳を塞ぎたくなった。
「ひどい、ひどいです……」
泣くあずみ。放っておけば、ずっとそのままでいる状況下で。
「女の涙で、男イチコロとか、少女漫画の中だけっすよー」
能天気な声に振り向けば、軽そうな男がこちらに――あずみを通り過ぎ、九条の隣に座った。


