「瑞希ちゃん、ここに座りなさいな」
ベッド横のパイプ椅子。誉が先ほどまで座っていた椅子だ。
ここに腰をかけ、先生に抱きつく誉を思い返す。
「瑞希ちゃんは、抱きついてくれないのかしらぁ」
「気持ち悪い」
それでも腰をかける瑞希で満足げな顔を先生はする。
「そこに座る人は、『心配したー』『大丈夫ー?』とか言わなきゃいけない決まりなのよ」
「……」
「はい、よく出来ました」
「言っていない」
「そうそう、そんなに心配してくれたのー」
「改竄だ」
「明日はリンゴがいいわねー」
「メロンで満足出来るよう、皮ごと食べさせますよ」
「いやぁ、入れ歯欠けちゃうわね」
「老けましたね、先生」
がしっと頭を鷲掴みにされた。万力のように指で圧迫され、頭痛と似た感覚に見舞われる。


