その返しに美菜が「おいっ」と激昂するも、瑞希は構わず背を向ける。
表情こそ変わらないが、病室から出るさいに開けられた扉は荒っぽく、歩調も早足。
誉の傍にずっといたい、という気持ちに反してまで――逃げたんだ。
誰もいない病院の屋上。暑さがまだ本格的になっていないにせよ、紫外線がひりつく。
手頃なベンチに腰かけ、頭を下げる。今にも消え入りそうな項垂れた姿勢は、普段の彼には似つかわしくない。
手を顔にあて、息をする。先ほどまで誉に握られていた手。
「離された……」
あんなにも、簡単に――
誉が自身を愛しているのは知っている。疑いようもない事実でも――誉が好意を抱くのは、俺だけじゃないんだ。


