ふっ、ふぅ。と荒い息遣いは誉の口から。口腔に引っ込むことを知らない舌が渇かないのは、唾液が多く分泌されているから。
人の肌に旨味成分はない。しかして、愛情という隠し味が誉に至福を味あわせる。
「ん……」
長い髪が邪魔だと、耳にかけるも、すぐに落ちてしまうのは無我夢中で舌を――顔を動かしているから。
胸板から腹筋。そうしてまた上へ。鎖骨を舐めようとしたが、捲ったシャツが邪魔をする。
「じっとしてて下さいね。今、切ります」
ハサミを持ち出し、チョキチョキと。手錠をしているため脱がせられないとした行動は、頭のどこかが冷静であるのを知る。
「瑞希さんの……」
切ったシャツを鼻に近づける。どんな香水にも負けない病み付きになる香りがした。
「勿体ないから、ハンカチにします」
「シャツをハンカチだなんて、誉は器用だなぁ」
頭では、『針で指を怪我したら危ないから、俺がやってプレゼントするか』とのサプライズを考えながら、体は鎖骨から跳ね上がる思いとなった。


