「あ、そーいや、聞きましたよ。企画部課長に呼び出しくらったって。また昇進すんのかっ、なんて話になってますよ」
「ああ、まあね」
「うわ、マジっすか!すげーわ、センパイ。どうやったらそー、ほいほい出世できんすか!俺にもアドバイス下さいよっ」
「ICレコーダーは常に持ち歩くこと」
「は?――あ、ミーティングとかそんな話をきちんと記録しとけって、ことすか?」
「そういうことかな」
柔らかな微笑を浮かべつつ、九条は膝上の弁当箱を手にした。
「いいっすね、愛妻弁当」
「厳密には『妻』じゃないけど、愛する人が作ったお弁当には違いないかな」
「結婚しないんすか」
「二人っきりになれた時の記念にしたいんだ」
え、との津久井を無視し、九条は弁当箱の蓋を開けた。


