「相変わらずイヤそーっすね。モテんの」
女性たちの羨望を受ける九条は心底嫌がっているのを、津久井は知っている。
――この人は、たった一人のしか愛せない。
単純にして、より過剰な愛情。
何てことはない。津久井は、九条の『生きた笑顔』を目にしたのだ。
最初は野次馬。噂の九条という奴を見たく屋上に足を運び、女の人気を勝ち取る男をからかいたいだけだった。
『彼女に作ってもらった弁当っすかー?』
昼食時、手作りと分かる弁当を膝上に置く九条に言った。
からかいだ。中学生並みの小さなちょっかい。――だというのに。
『そうなんだ!彼女が俺のために早起きして作ったお弁当でね――』
そう嬉々とし喋る九条の見方ががらりと変わった瞬間――ああ、この人は、嘘つきなんだ。と知る。


