物を落とす音、バタバタ走る音。最悪、皿が割れた音でも聞いた日には、一日中泣いてしまう。
「“思い出して、泣くんだ”。誉は俺に触れてなければ、安心できない」
ガラスを割っても熟睡する誉は、瑞希の言う通りなのだろう。泣かせたくない一心で、瑞希は誉と二人っきりになろうとするが。
「小学四年生なら、社会の仕組みが分からないわけじゃないでしょう。現実を見なさい」
どうやって生活していくつもりだと、珍しく先生の笑みが消えた。
「見てますよ。だから、考えました。住居だなんてその辺の空き家でも公園にでも確保すればいい。お腹空いたらスーパーで盗み、誉の欲しいオモチャあればまたそれで」
「最低な考えね」
「なら、援助してくださいよ。最低な子供を育てた院長として、名を馳せますよ?」


