あすなろ院には、『挨拶』がよく飛び交う。
人との触れ合いを推進するような挨拶の数々。だからこそ、瑞希にはここが居心地悪い。
独りでいたいのに、誰かしらが話しかけてくれるここが。
現に、自分よりも年下の子がこちらを見て何かを言いかけたので、瑞希は目線を外し、一番落ち着く場所を探した。
外はやはりダメだと思い、裏口に回る。エアコンの室外機やボイラーがある基本、人が立ち寄らない場所だが、古びたベンチが一つだけある。
もう何年も本来の役目を果たしていない古びたベンチに腰掛ければ、軋む音。それでも甲斐甲斐しく壊れないベンチに、瑞希は深く腰掛けた。
一息つく。やっぱり独りがいいと思っていれば、視界に小さな姿が映る。


