麗しの彼を押し倒すとき。




「ごめんね、柚季っち」


私が鞄から湿布を取り出していると、フルーツオレを飲みながら波留くんが呟いた。



「柚季っちの名字が桐谷だって知ってたら、すぐにあの柚季だって気づいた」

「そう言えば波留くん、朝礼の時いなかったもんね」


赤くなった頬はまだ腫れており、なんとも痛々しく感じる。

私は桃子先生から余分に貰っていた湿布のセロファンを取ると、少し身を乗り出して波留くんの左頬に貼り付けた。

…と、同時に波留くんの手が私の手を取り、そのまま頬へと引っ付ける。



「柚季っちの手冷たくて気持ちいいー」

「……ちょっと、波留くん!」

「さっきの女の子の手とは正反対」

「…もう!ひっぱたくよ!」


私がぐいっと無理やり手を引っ込めると、さみしそうに眉を下げる。

いつの間にあの波留ちゃんはこんな女ったらしになったんだ、と不覚にも火照ってしまった自分の頬に冷たい手を当てた。