「そ、そういえば何か頬っぺた腫れてるけど大丈夫?」
何とか話題を変えようと口を出たのは、波留くんの左頬に付いた手形のことだった。
「ああ…これ、さっき女に付けられた」
「へ?」
お、おんな?
それって平手打ちされたってこと?
一体何があったらそんなことされるんだ。そう思うと同時に、慣れたその言い方から波留くんの周りでは日常的にあるのだと理解した。
「てか、それより椿!」
まるでそんなことはどうでもいい。と言うかのようにサラリと流すと、椿にスマフォを近づける。
「近いな、何だよ」
「何だってこっちが何だよ」
「それならLINEした通りだけど」
「だから聞いてんの! 俺、柚季が帰ってきたって一言も聞いてないんだけど」
「だからさっきLINEしたんだろ」
「お前、もっと前から知ってたんだろ。……ったく、今柚季どこにいるわけ?」
「は?」
椿が相当呆れたように、真剣な波留くんを見上げた。
……なんとなく、勘の悪い私でも今の会話を聞いてわかってしまった。
と言うか、今の今までなんで気がつかなかったんだろう…。やっぱり私のボケは相当なものなのかもしれない。
波留くんの名字は水瀬。
水瀬波留。
名前は全く一緒なのに、波留ちゃんが女と思っていた先入観から気がつけなかった。
……そう、私が会いたかった4人の幼なじみの最後の一人。
波留ちゃんは波留くんだったのだ。

