麗しの彼を押し倒すとき。



「あ、そういえば…」


何かこの場を盛り上げる話題は無いのか。そう思い、口にしようとした言葉は、勢い良く開いた扉と鳴ったドアベルの音で掻き消された。

全員の視線が突如開いた扉と、その先に立っていた人物を捉える。



「おい波留、扉はゆっくり開けろっていつも……」

「椿!どういうことだよ、これ!」


ジョニーさんの言葉も耳に入っていないのか、その人はスマフォを片手に画面をこちらへ突き出しながら、奥に座っている私たちへずんずんと向かってくる。

なぜか頬は赤く腫れていて、痛そうなそれは手形に見えないこともない。



「何で椿だけ知ってたんだよ」


近づいてくるその人の姿を呆然と見つめていると、不意にその視線が私を捉えた。

驚いたように見開かれるその目に、私も思わず指をさす。



「波留くん!」

「え、待ってなんで柚季っちここにいんの!?」

「あ、ちょっと色々あって…」

「てかさ、昼からバックレてたでしょ」


今一番ほじくり返して欲しくない話題に、ゔっ…と言葉を詰まらせる。