麗しの彼を押し倒すとき。



両者睨みを効かせ前に出ると、額同士がコツンとぶつかる。



「何よ」

「何だよ」

「大体知らない人にここまで言われる筋合いないと思うんだけど!」

「そっくりそのまま、あんたに返すよ」


そう言い合うと、どちらからともなく力を抜いて額を離す。

お互い相手を睨むと、傍観していた凪と椿に向き直り言葉を放った。




「「ねえ、こいつ誰!?」」


後から聞くと私たちの動きは、周りから見ればシンクロのようだったそうだ。

二人を見ると、ポカンと私たちを見上げていた。





「棗、柚季だ」


静かになった空間にポツリと落とされたのは、凪ちゃんの声だった。



「柚季だよ、そいつ」


繰り返し言うと、席にあったブラックコーヒーを口に運び、棒キャンディー男を見る。



「……柚季?柚季ちゃん?」


すぐ近くからさっきとは違い穏やかな声が聞こえ、そちらを向くと、少し切ない表情をした棒キャンディー男がいた。

しかしそう思ったのもつかの間、すぐに眉を寄せると席にドカッと座り、顎で私を指す。



「嘘だね、柚季ちゃんはこんなんじゃない…」


少しいじけてるような、彼のそんな声色が空間を満たす。



「はーい、柚季ちゃん。ジョニー特製スペシャルコーヒー、ミルクたっぷり生クリームを添えてでーす……って、あれ?」


そんな場所にジョニーさんの空気の読まない声が聞こえ、コトリと置かれた珈琲のマグカップを見つめた私は、なんとも言えない気持ちになった。