麗しの彼を押し倒すとき。



隣で盛り上がる桃子先生を苦笑いで見つめて視線をずらすと、さっきとは打って変わり落ち着いてる椿と目が合う。

女の子同士色々話したり、共有したり、期待してたことができなかったのは残念だけど。

久しぶりに会えて嬉しいという気持ちもある。



「でも良かった。知ってる人がいるってだけで、凄く心強いし…」


今までの転校で何度も孤独を味わって来たからか、知り合いがいるという安心感に嬉しくなる。

思わず口にすると、椿の眉がピクリと動いた。



「柚季……」

「あ、そうだ!」


私と椿の口が開いたのは、ほぼ同時だった。

遮るように突飛な声を出した私のせいで、椿の声がかき消され、そして遮られる。



「どうした?」


驚いたように自分の話を引っ込ませた椿が、少しずれた眼鏡を軽く中指で持ち上げた。


「いや、そういえば凪ちゃんに聞きたいこと沢山あったんだよね…」

「聞きたいこと?」


私の言葉が意味深に聞こえたのか、机に肘をかけ椿が少し前のめりになる。



「……まぁ、椿がほとんど話してくれたからいいんだけど」

「あぁ、実は男だったのかって話か?」

「う、うん…」


その問いに笑顔で返す。

なぜかこの時、あの事を口にするのは躊躇われた。